大ヒットとなり、大人も子供のこれを
涙しながら見ている理由やその背景
司会:宮台真司、神保哲生
概要
月の5回目の金曜日に特別企画を無料でお届けする5金スペシャル。今回は定番になりつつある映画特集で、以下の4作品(関連を含めて7作品)をジャーナリストの神保哲生と社会学者の宮台真司が議論した。
・『鬼滅の刃 無限列車編』
・『TENET』(同作品との関連で『メメント』)
・『スパイの妻』(同作品との関連で『マリアンヌ』)
・『異端の鳥』
・『生きちゃった』(同作品との関連で『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』)
鬼滅の刃については、同作品がコロナ禍で苦境に陥っていた映画界にあって、空前とも呼ぶべき大ヒットとなり、大人も子供のこれを涙しながら見ている理由やその背景などに迫った。
TENETについてはこの作品のモチーフを正しく理解するためにはクリストファー・ノーランの初期の作品『メメント』を見ている必要があるため、『メメント』も取り上げて、この作品が「逆回しのフェチ」ノーランの長年の念願が成就したものであることなどを紹介した。
「コロナの惨状もさることながら、それ以前から社会の劣化はとどまるところを知らない。そのような中にあって、われわれはついつい一人ひとりが本来考えておかなければならないことや、見過ごしてはならない大事なものを忘れがちになる。映画はそれに気づかせてくれる貴重な機会を提供してくれる場合が多いが、とりわけドキュメンタリー作品や実話に基づく映画は、そうしたテーマを再確認させてくれる。」
マル激トーク・オン・ディマンド (第1034回)
司会:宮台真司、神保哲生
概要:
その月の5回目の金曜日に特別企画を無料放送する5金スペシャル。
今年最初の「5金」となる今回は、映画、とりわけドキュメンタリー映画や実話を題材にした映画を主に取り上げ、宮台真司が解説した。
今回取り上げた映画は『行き止まりの世界に生まれて』、『KCIA 南山の部長たち』、『ある人質~生還までの398日』、『バクラウ』、『聖なる犯罪者』の5作品。
コロナの惨状もさることながら、それ以前から社会の劣化はとどまるところを知らない。そのような中にあって、われわれはついつい一人ひとりが本来考えておかなければならないことや、見過ごしてはならない大事なものを忘れがちになる。映画はそれに気づかせてくれる貴重な機会を提供してくれる場合が多いが、とりわけドキュメンタリー作品や実話に基づく映画は、そうしたテーマを再確認させてくれる。
『行き止まりの世界に生まれて』(ビン・リュー監督。2018年アメリカ)はアメリカ・イリノイ州の地方都市を舞台に、貧しく暴力的な家庭から逃れるようにスケボーにのめり込む若者たちが、暗い過去と向き合いながら大人になっていく過程を描いたドキュメンタリー。サンダンスのブレークスルー・フィルムメイキング賞を始め世界各国で多くの賞を受賞するなど、ドキュメンタリー作品としては近年希に見る高評価を受け大ヒットとなった。
「検察はいつも自分の都合のいいように法を解釈し、自分たちの解釈こそが正しいという主張がまかり通ることに慣れているため、今回もその通りになると思い込んでいたようだが、そうはいかない」ー郷原弁護士
郷原氏と日本の検察に正義はあるのかを問うた上で、今回の5金映画スペシャルでは真の正義とは何かを問う2本のドイツ映画マルコ・クロイツパイントナー監督による作品『コリーニ事件』(2019年)とファティ・アキン監督による『女は二度決断する』(2017年)に描かれた、法外の正義とは何かを議論した。
ゲスト:郷原信郎(弁護士);
司会:宮台真司、神保哲生

マル激トーク・オン・ディマンド (第1008回)
概要:
5回目の金曜日に普段とはちょっと違う特別企画をお送りする「5金スペシャル」。今回は5金ではお馴染みとなった映画特集にプラスαとして映画のテーマに関連した日本のニュースを一つ取り上げる。
まず、日本のニュースとしては郷原信郎弁護士をゲストに、菅原一秀前経産相の起訴猶予事件のその後の新たな展開を取り上げた。菅原経産相(当時)が自身の選挙区の有権者に3年間で300万円にのぼる香典などを送っていたことが公選法違反にあたるとして昨年10月に刑事告発されていた事件は6月25日、菅原氏が大臣を辞任するなどして反省しているなどを理由に東京地検特捜部は異例の起訴猶予処分として幕引きを図った。
犯罪事実を認めながら立件しない大甘の措置自体が、何らかの政治取引の臭いがプンプンするもので大いに物議を醸したが、東京地検はその裏でもっとひどいことをしていた。実は東京地検は菅原氏を告発した一般市民に対して6月15日に告発状に不備があったとの理由で告発状を返戻(へんれい)、つまり差し戻していたのだ。そしてその10日後に起訴猶予処分を決めた。
何のために東京地検はこんなことをしたのか。
スタンフォード大学の "Persuasion Pshychology" 「説得心理学」?「勧誘心理学」?の授業風景も挿入されていたりで、知らない間に、どこまで人の感情、思考を左右する「侵害的」マーケティングが進んでいるのかがよく見えた作品だった。エドワード・スノードンの警告などにより、一般的に噂になっていた事柄だが、「良心的離反者」たちの言葉は、その危険な現実をぐっと身近な問題にしてくれる。
フェイスブックが登場して、猫も杓子もアカウントを開設していた時代に、既に亡くなっているが、元電気技師でロデオ写真の先輩が「危険だ、後で噛みつかれるぞ」と繰り返していた言葉を思い出す。お勧めです。**

ニュー・ヨーク・タイムズ紙による映画批評:
「電源を抜いて逃げろ」、
ネットフリック社の‘The Social Dilemma’
「社会的ディレンマ(仮題)」
ジェフ・オーロウスキーのこのドキュメンタリーは、依存症(常用癖)とプライヴァスィーの侵害が、ソーシャル・メディアの特徴であり、バグ(ソフトウェアの瑕疵/欠陥)では無い様子を探る。
写真:"The Social Dilemma" に出演中の、グーグル社の元設計倫理学者トゥリスタン・ハリス。(AP/Netflix)
監督:ジェフ・オーロウスキー
”The Social Dilemma” 1時間29分 (PG−13)
ソーシャル・メディアには中毒性があり気味悪いものである事は、フェイスブック、ツウィッター、インスタグラムなどを利用するどの人にとっても新しい発見ではない。だがジェフ・オーロウスキーのドキュメンタリー、"The Social Dilemma"では、これらの企業からの良心的離反者たちが、ソーシャル・ネットワーキングの有毒性は特徴/環境/土台であり、バグではないと説明する。
利益のための人間行動の卓妙な操作は、マキャヴェリ的精度でこれらの企業に符号化されて入っていると主張する。際限の無いスクローリングやプッシュ通知が、ユーザーを常に引き込み参加させる;個別化された推奨事項はデータを、我々の行動を予測するだけでなく行動に影響を及ぼし、ユーザーを広告主や宣伝/伝道者のいい鴨にする。
気候変動に関する彼のドキュメンタリー、“Chasing Ice”と
“Chasing Coral,” でしたように、オーロウスキーは一般人にとって理解するにはあまりにも大きく抽象的、ましてやその心配をするなど無理と思える現実に取り組み、人間レヴェルまで落とし込む。"The Social Dilemma"では、ホラー分野の最も古い「お約束物語」の一つである - ドクター・フランケンシュタイン、行き過ぎた科学者 - をデジタル時代に再登場させる。
速いペースで編集されたインタヴューで、オーロウスキーは、ソーシャル・メディアの構築に貢献し、今、ユーザーの精神衛生と民主主義の基盤に与える彼らの創造物の影響を恐れる男性と(少数の)女性たちと対話する。彼らは、創始者が投資家に融資を迫る調子で、明確な金言と簡潔なアナロジーを駆使し、注意を促す証言を提供する。
「人類史上、50人のデザイナーが、20億の人々に影響を及ぼす決断をしたことは無かった」とトゥリスタン・ハリス、グーグル社の元デザイン倫理学者は言う。アンナ・レムキ、スタンフォード大学の中毒症専門家は、これらの企業は人間関係のための脳の進化的必要性を悪用すると説明する。さらにロジャー・マックナミー、フェイスブックの初期の投資家は、背筋が凍る主張をする:ロシアはフェイスブックをハックしなかった;ロシアは単にそのプラットフォーム(環境)を利用したのだ。
これらの多くは目新しいことではない、が"The Social Dilemma"は、P.S.A. - ソーシャル・メディア依存症の結果に苦しむ形式的架空の中流家庭のインタヴューを散りばめながら、一層深く説明する。会話のない夕餉の食卓、自己像問題を抱える思春期の娘(ソフィア・ハモンズ)、曖昧模糊とした思想を売るユーチューブの推薦によって過激化する十代の息子(スカイラー・ギソンド)がいる。
。。。

「青春は戦争の消耗品ではない」
〈やっと戦時生活も終わった。これで自分で
考え、自分の意思で生きていける。
本当の人生がまた帰って来た〉
「みんながしっかりと怯えてほしい。大変なことになってきている。過剰に怖がらせているように思われるかもしれませんが、過剰に怯えていたほうが間違いないと僕は思う。それが、実際に怯えてきた世代の役割だろうと思うので、敢えて言いますけどね。怯えなきゃいかん。戦争というものに対して。本当に」
写真:戦争と平和をテーマにすえるようになったのかについて語っていた大林監督(ドキュメンタリー『大林宣彦の遺言』(2017年9月2日放送/NHK Eテレ)
大林宣彦監督が、肺がんのため4月10日夜に82歳で亡くなった。新型コロナの影響で映画館が公開延期となったが、この日は、病魔と闘いながらつくりあげた最新作『海辺の映画館─キネマの玉手箱』の公開予定日だった。
大林監督といえば、『時をかける少女』などの“尾道三部作”で知られているが、近年は、反戦と平和への思いを強く訴えるようになった。
今回の新作『海辺の映画館』も久しぶりに尾道に舞台にしたエンターテインメント作品であり、同時に、戦争の歴史を無声映画、トーキー、アクション、ミュージカルといった様々な映画表現で展開していく、大林監督の反戦と映画への思いがつまった作品となっているという。
それにしても、大林監督はなぜ、戦争と平和をテーマにすえるようになったのか。それは2017年、前作『花筐/HANAGATAMI』が公開される際に、大林監督自身がその理由を語っていた。
『花筐/HANAGATAMI』は、檀一雄原作の、日米開戦直前を舞台にした青春群像劇で、やはり戦争と平和の問題が深く掘り下げられている作品だ。
この『花筐/HANAGATAMI』の映画化は42年前に頓挫していた企画を復活させたものなのだが、大林監督はその理由について、ドキュメンタリー『青春は戦争の消耗品ではない 映画作家 大林宣彦の遺言』(2017年9月2日放送/NHK Eテレ)のなかでこのように語っていた。